Hiking column
ハイキングコラム

CROSS TALK やまなしハイキングコース100選・リリース記念対談「さあ、山梨の低山を歩こう!」

日本屈指の山岳県である山梨には、富士山(3776m)、北岳(3193m)、間ノ岳(3190m)の日本の高山トップ3が揃っています。でも山梨の山の魅力は高山だけではありません。実は山梨は歴史、絶景、文化などの魅力にあふれた低山の宝庫です。その中から選び抜いた低山を紹介する「やまなしハイキングコース100選」がいよいよリリース!
そこで、コースの選定・監修を手がけていただいた、世界の名だたる山を制覇した登山家の花谷泰広さんと、日本中のあらゆる低山の魅力を知り尽くした低山トラベラー・山旅文筆家の大内征さんに、山梨の低山の魅力などを語っていただきました。

低山と高山、おふたりが求める山と環境が山梨にあった。

大内 僕は子どもの頃から歴史が好きで、特に戦国時代には夢中になりました。中でも武田信玄と上杉謙信は憧れの武将でしたね。ですから初めて山梨に来た時には「信玄公ゆかりの地に来た!」という興奮がありました。低山によく登るようになってからは、これまでに触れてきた日本各地の歴史や文化がここ山梨でつながっていき、それから山梨県中の低山や古道・街道にとても魅力を感じるようになったんです。

花谷 僕は常に、山に登る環境を探し続けてきて、その結果山梨に住むようになったんです。高校卒業までは地元の六甲山に登り、山岳部に入りたくて信州大学に行きました。大学卒業後は、夏は富士山でガイドをして冬は当時富士山頂にあった富士山測候所に強力(ごうりき)として荷物を上げていましたから、富士山には年間50回くらい登りました。山梨に移住して15年目になりますが、山梨は山に行くにも、都心へ行くにもだいたい2時間圏内というアクセスの良さも魅力ですね。

大内 たしかに、山梨は首都圏から本当に近いですから、毎週末でも訪れたくなりますね。普段の生活と自然が循環してつながっている感覚が養えると、山岳をもっと身近に感じられるようになると思います。そういう感覚を養うのに、山梨の低山は抜群にいい。ちょっと気持ちが落ち込んだときに通える、身近な大自然。四方を山岳に囲まれていますからね。きっと都会に帰ってからも「またあそこに戻りたいな」と感じると思います。

大内さん・花谷さんの写真1 大内さん・花谷さんの写真2

人が暮らしているところと、山をつなぐ間には必ず文化がある。
だから旅みたいな視点で山に入るのもいい。

大内 低山で未知の文化に触れることと、高山に挑戦して高みを目指すこと。対極にあるようでいて、ぼくは二項対立ではなく「二項一対」だと思うんです。どちらも山を楽しむうえでは欠かせない視点だから、どっちが好きか、自分の気持ちに素直に従えばいいと思う。たとえば「まち歩き」が好きな人なら、人が暮らしているところと山をつなぐ文化に注目して、まるで旅人のように山に入っていくのもいいと思うんですよね。

花谷 たしかにヒマラヤもそう。人々が生活しているところをキャラバンで一週間くらいかけて歩くんだけど、それは山道じゃなくて生活の道で、車は通らないけど、馬は通っていたりとか。そういう道を歩いて山深くに入っていくから、麓からのストーリーがあるって感じますね。

大内さん・花谷さんの写真3

低山って楽しみの幅が広がる。
特に子どもの頃の経験は忘れない。

大内さん・花谷さんの写真4

花谷 最近ハマっているのが山頂でするタコパ!。家のすぐ近くにある中山(北杜市)に子どもと一緒に登ってたこ焼き作って楽しんでいます。低山は楽しみの幅が広がりますよね。中山は今回のハイキングコース100選にも入っていますが、登山口から30分くらいで山頂に着けるし、展望台もあって甲斐駒ヶ岳もバーン!っと見えて、最小の努力で最大の成果が得られるんですよ。

大内 いいですね〜!

花谷 僕はずっと高い山に登ってきたけど、考えてみれば、生まれ育ったのは六甲山のすぐ近くで、小さい頃から毎日のように低山に登っていたわけですよ。山でおじいちゃんが魔法瓶※1から注いでくれた温かいお味噌汁のことは、今でもよく憶えています。

大内 本当に子どもの頃の記憶って忘れないですよね。そういう記憶を子どもたちに与えてあげられる環境が山梨の低山にもあると思います。

花谷 はじめのうちは、何のために登るかとか、目当てなんてなくていい。きっと、行けば感じるから。とにかく行く機会をつくって、ありのままを感じればいいんじゃないかな。初めは軽いノリで行けばいいと思う。そこから登山×◯◯になっていくんじゃない?絵を描くとか、写真を撮るとか、コーヒーを淹れるとか、そこはもう人それぞれ。

生活の音が聞こえる。
人の営みが伝わってくる距離感がいい。

大内 僕は今、歴史や文化をたどる低山の楽しさを分かち合うためにさまざまな発信をしていますが、低山の魅力はもちろんそれだけじゃないと思う。たとえば低山って麓の町の暮らしの音とか聞こえますよね。学校の下校の音楽や、畑仕事をしているおじさんの声がなんとなく聞こえてきたり、動きも見えたりとか。俯瞰して見てるんだけど、日常生活と山の近さになんだかワクワクするんですよ。

花谷 甲斐駒ヶ岳はすごく大きい山だけど、僕は里山だと思ってる。僕が運営している七丈小屋のあたりでも、風にのって麓の音が聞こえるんですよ。だから隔絶感がなくて、寂しさを感じないんです。山梨にはそういう里山がたくさんありますね。

大内 どの山に登ってもだいたい金峰山の五丈岩が見えるのが山梨の山の面白さだと思っていて。あそこが甲府市の北端なんだと、北極星みたいに捉えています。それに加えて富士山や南アルプスといった山岳展望を楽しめるのも山梨の低山の魅力ですね。昔の人も、あの山を眺めて感動したり旅の目印にしたんだろうな、なんて空想するのも楽しいです。

大内さん・花谷さんの写真5

道迷いをしないために、地図アプリを入れたスマホとバッテリーは必携!

大内さん・花谷さんの写真6

花谷 歴史的に見ると合理的なところにしか道はできない。山がここを歩けと言っているような場所に道はあるものです。今回のハイキングコースにもそういった古い道があるから、地図を見て地形とか確認しながら歩いても面白いと思う。後から拓かれた道はまた少し違うけどね。

大内 低山は、古道、産業道、生活道、けもの道などいろんな道が入り組んでいるから、うっかりすると道迷いの危険性をはらんでいますよね。だからすぐに間違いに気づく準備ができている、これがとても大事。そのために山に入る人には地図を見る習慣とともに、必ずスマホに地図アプリを入れておいてほしいです。電波環境が良いところで地図をダウンロードしておけば、山の中でもGPSで現在地が確認できますからね。

花谷 今はスマホひとつあれば道迷いを防ぎやすくなるし、万一の場合は通報もできるから本当に便利。天気予報を確認して、あとは地図アプリがあれば安全の幅が広がります。最初のうちは高いお金をかけて、あれもこれも揃えすぎなくていいですよ。最低限、雨具とハイキングしやすい靴とヘッドライト、スマホとバッテリー、あと飲み物と食べ物を忘れないように。

大内 山に行ってみて必要を感じたものがあれば、次に行くまでに備えようと判断すればいいと思う。登山に限らず自分で疑問を持ったら、自分で調べて、自分で考えることが必要なんじゃないかな。気づきから少しずつ進めていく、それでいいと思います。

※1)内びんと外びんの二重構造でその間を真空状態にすることにより熱の移動を防ぎ長時間保温・保冷できるようにした容器

「やまなしハイキングコース100選」
選定・監修者のおふたりのメッセージと、
カテゴリー別オススメコース!

大内さん・花谷さんの写真7

「やまなしハイキングコース100選」は里山あり渓谷あり古道あり、低山から1500mを超えるミドル級の山までまんべんなく入っています。しかも山梨の全市町村を網羅!バラエティ豊かで絶対楽しめますよ。

大内さん・花谷さんの写真8

山梨の低山には、なかなか登りごたえのある山もあります。「やまなしハイキングコース100選」の山を全部登れば、体力的にも技術的にもかなり実力がつくと思います。是非、チャレンジしてください!

では、僕たちオススメのコースを紹介します。
どこに行こうか迷ったら、まずこのコースに行ってみてください。
山梨の低山の楽しさを満喫できますよ!

三方分山の写真
富士山展望コース

パノラマ台と三方分山は、どちらかひとつでも富士山の眺望を満喫できますが、余裕がある人には縦走もオススメです。特に新緑の季節は鮮やかな緑の中に映える青い精進湖、そして白い雪が残る富士山が魅せる風景は素晴らしい!夕日が差し込む時間にパノラマ台を下ると最高にいいムードですよ。

日向山の写真
森と渓谷コース

まるでビーチみたいな山頂には、絶対感動します。八ヶ岳が目の前に見えて、背後には甲斐駒ヶ岳も見えて、ここから次のステップに進みたい人は、憧れを抱ける大きな山を見て、きっと行ってみたくなりますよ。

精進ヶ滝の写真
やまなみ絶景コース

ここは単に渓谷沿いを歩くのではなく、いくつもの橋があってアトラクション感覚が味わえる楽しさがあるんです。橋で川をまたぐってワクワクしますよね。そして待っているのが東日本最大級の落差121mを誇る滝の絶景です。

菊花山〜御前山の写真
花と絶景コース

100選では御前山と合わせて富士山眺望のカテゴリーに選んでいますが、菊花山のツツジは本当に素晴らしいです。ツツジが額縁みたいになって正面に富士山が見えて、フォトジェニックです。

湯村山〜八王子山〜天狗山の写真
里山散策コース

里山感を味わいながら気軽に歩けるので、初心者の方にオススメです。豊かな森や甲府市街地の風景を眺めたり、かと思ったら古墳もあったり。とても楽しい低山です。

日川渓谷〜栖雲寺の写真
歴史探訪コース

天目山栖雲寺は武田家が滅亡するとき、勝頼が最後に目指した場所です。実は武田三代よりも前の時代に、武田信満が天目山で自害し、武田家は断絶したことがあります。のちに室町幕府が信満の息子を甲斐守護に据えたことで復興をとげ、新生武田となっていったわけですが、もしかしたら勝頼はこれを知っていて、ここからまたいつか武田家がよみがえることを願っていたのかもしれません。

花谷泰広さんの写真

花谷泰広

登山家。1976年兵庫県生まれ。優秀な登山家に贈られる国際的な賞「ピオレドール賞」受賞。登山の発展や継承につながる幅広い活動に邁進している。
「やまなしハイキングコース100選」監修・アドバイザー

大内征さんの写真

大内征

低山トラベラー・山旅文筆家。1972年宮城県生まれ。低山の歴史や物語を辿り知的好奇心をくすぐる山旅を紹介。テレビ・雑誌等で山の魅力を発信。著書に「低山トラベル」など。
「やまなしハイキングコース100選」監修・アドバイザー

Before going hiking
ハイキングに行く前に

羅漢寺山
安全にハイキングを楽しむために
山梨の登山・山岳情報ポータル